Agentic RAG(エージェンティックRAG)は、従来のRAGにAIエージェントの仕組みを組み合わせた技術です。
従来RAGは、社内文書やマニュアルなどを検索し、その情報をもとに回答します。しかし、実際の業務では1回の検索だけでは答えが出ないこともあります。
たとえば「なぜ売上が落ちたのか」を調べる場合、複数の情報が必要です。
- 売上データ
- 顧客・商談情報
- マーケティング施策
- 在庫状況
- 過去の実績
Agentic RAGでは、AIが「何を調べるか」「どの情報を使うか」「追加検索が必要か」を判断しながら調査します。
つまり、「検索して答えるAI」から「必要な情報を自ら探すAI」へ変わることが大きな特徴です。
これにより、人が複数のシステムから情報を集める作業を、AIが支援できるようになります。
この記事では、主に次の内容を解説します。
- Agentic RAGとは何か
- 従来RAGとの違い
- 企業システムへの影響
- 企業での活用例
- 基本的な仕組み
- 導入時の設計ポイント
- 課題と注意点
- PoCと評価方法
Agentic RAGが企業システムをどのように変える可能性があるのか、具体的に見ていきます。
そもそもAgentic RAGとは何か

Agentic RAG(エージェンティックRAG)とは、従来のRAGにAIエージェントの仕組みを組み合わせ、AIが必要な情報や検索方法を判断しながら回答する仕組みです。
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれます。生成AIが回答する前に、社内文書やデータベースなどから関連情報を検索し、その内容をもとに回答します。
従来RAGは、基本的に「質問 → 検索 → 情報取得 → 回答」という流れで処理します。
一方、Agentic RAGでは、AIが「何を調べるか」「どの情報源を使うか」「追加検索が必要か」を判断しながら処理を進めます。
| 比較項目 |
従来RAG |
Agentic RAG |
| 基本処理 |
検索して回答 |
判断しながら検索・回答 |
| 質問 |
質問をもとに検索 |
必要に応じて分解 |
| 情報源 |
設定した情報源が中心 |
複数の情報源から選択 |
| 追加検索 |
固定的 |
必要に応じて実行 |
| 得意な業務 |
FAQ・社内検索 |
調査・分析・横断検索 |
たとえば「今月の売上が落ちた原因を調べて」という質問では、売上データだけでは原因を判断できない場合があります。
Agentic RAGでは、売上を確認したあと、必要に応じて商品別の実績、顧客情報、営業活動、在庫状況などを追加で調べることができます。
| 処理 |
行うこと |
| 質問の理解 |
何を調べるか整理 |
| タスク分解 |
質問を複数の調査項目に分ける |
| 情報検索 |
必要なデータや文書を取得 |
| 結果確認 |
情報が十分か判断 |
| 追加検索 |
不足する情報を追加で取得 |
| 回答 |
情報を整理して回答 |
つまり、従来RAGが「検索して答える仕組み」なら、Agentic RAGは「必要な情報を判断しながら調べて答える仕組み」です。
ただし、単純な社内検索では従来RAGで十分な場合もあります。複数の情報を横断して調査する業務ほど、Agentic RAGを活用しやすくなります。
なぜ従来RAGだけでは企業システムに限界があるのか
従来RAGは、社内文書やマニュアルなどから必要な情報を探す用途では有効です。
一方、企業の実際の業務では、1つの情報源を検索するだけでは答えられない質問も多くあります。
たとえば「なぜ今月の売上が落ちたのか」という質問です。売上データだけでは原因まで分からず、顧客情報や営業活動、在庫、マーケティング施策なども確認する必要があります。
| 課題 |
内容 |
| 1回の検索では足りない |
複数の情報を確認する必要がある |
| 情報が分散している |
文書、DB、CRMなどに情報が分かれている |
| 質問が曖昧 |
そのまま検索しても必要な情報が見つからない場合がある |
| 情報不足を判断しにくい |
検索結果が不足していても回答する可能性がある |
| 複数の手順が必要 |
検索、比較、確認を順番に行う必要がある |
企業では、必要な情報が1か所にまとまっているとは限りません。
たとえば、顧客情報はCRM、売上は基幹システム、提案資料は社内ストレージというように、情報が複数のシステムに分散していることがあります。
また、「売上が落ちた原因を教えて」という質問に対して、「売上が落ちた原因」という答えがそのまま保存されているとは限りません。
実際には、売上の変化を確認し、商品や顧客ごとに比較し、営業活動や施策に変化がなかったかを順番に調べる必要があります。
さらに、最初の検索で情報が足りなければ、検索条件を変えたり、別のデータを確認したりする必要があります。
つまり、企業業務では「情報を検索すること」だけでなく、「次に何を調べるべきかを判断すること」が重要になります。
FAQや社内規程、マニュアル検索などは従来RAGでも対応しやすい一方、複数の情報を横断して調査・比較する業務では限界があります。
こうした検索だけでは解決しにくい業務を支援する考え方が、Agentic RAGです。
Agentic RAGは何を変えるのか

Agentic RAGの大きな特徴は、検索の流れを固定せず、AIが状況に応じて次の行動を判断できることです。
従来RAGでは「質問 → 検索 → 回答」が基本でした。Agentic RAGでは、質問を分解し、情報源を選び、必要であれば追加検索まで行います。
| 変化 |
内容 |
| 質問を分解する |
複雑な質問を複数の調査項目に分ける |
| 情報源を選ぶ |
質問に合ったデータやシステムを選択する |
| 結果を確認する |
取得した情報で回答できるか判断する |
| 追加で調べる |
情報が不足していれば再検索する |
| ツールを使う |
必要に応じてDBやAPIなどを利用する |
質問を分解して調査する
たとえば「今月の売上が落ちた原因を調べて」という質問は、そのまま検索しても答えが見つからない場合があります。
Agentic RAGでは、「売上はどう変化したか」「どの商品が落ちたか」「顧客や営業活動に変化はあったか」など、必要な確認項目に分けて調査できます。
必要な情報源を選ぶ
企業には、文書、CRM、基幹システム、データベースなど、さまざまな情報源があります。
Agentic RAGでは、質問に応じて必要な情報源を選び、複数のデータを組み合わせて回答する仕組みを作れます。
情報が足りなければ追加で検索する
最初の検索だけで十分な情報が得られるとは限りません。Agentic RAGでは、取得した情報を確認し、不足していれば追加検索を行えます。
検索条件を変えたり、別の情報源を確認したりすることで、複数のステップを使った調査が可能になります。
検索以外のツールも利用する
Agentic RAGでは、文書検索だけでなく、データベースへの問い合わせやAPIなどをツールとして利用する設計も可能です。
そのため、「情報を探す」だけではなく、「必要なデータを取得して比較・整理する」ところまでAIが支援できるようになります。
つまり、Agentic RAGによってRAGは、単純な検索・回答の仕組みから、目的に応じて調査方法を変える仕組みへと広がります。
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Agentic RAGで企業システムはどう変わるのか
Agentic RAGが広がると、企業システムは「人が情報を探す仕組み」から「AIが必要な情報を集める仕組み」へ変わる可能性があります。
特に変化が期待されるのが、社内検索、データ分析、問い合わせ対応、システム横断の4つです。
| 領域 |
従来 |
Agentic RAG |
| 社内検索 |
人が資料を探す |
AIが必要な情報を探す |
| データ分析 |
人がデータを集めて分析 |
AIが複数データを調査・整理 |
| 問い合わせ |
FAQを検索して回答 |
複数情報を確認して回答 |
| システム利用 |
人が各システムを操作 |
AIが必要なシステムを選択 |
社内検索から調査へ変わる
従来の社内検索では、人がキーワードを入力し、必要な資料を探します。
Agentic RAGでは、質問に必要な情報をAIが判断し、複数の資料やデータを調べて回答する仕組みを作れます。
データ分析の進め方が変わる
企業のデータ分析では、必要な数字を複数のシステムから集める作業が発生します。
Agentic RAGを活用すれば、質問に応じて必要なデータを取得し、比較・整理する流れをAIが支援できます。
問い合わせ対応が問題解決型になる
従来RAGは、規程やFAQなどに答えがある質問に向いています。
Agentic RAGでは、複数の情報を確認しながら回答できるため、単純な検索では解決しにくい問い合わせにも対応しやすくなります。
複数システムをAIが横断する
これまでは、人がCRMや基幹システム、社内ストレージなどを開き、それぞれから情報を集めていました。
Agentic RAGでは、AIが目的に応じて必要な情報源を選び、複数のシステムを横断して情報を集める仕組みを構築できます。
つまり、企業システムの使い方が「人がシステムを操作する」形から「人が目的を伝え、AIが必要な情報を集める」形へ変わる可能性があります。
企業で考えられるAgentic RAGの活用例

Agentic RAGは、複数の情報を確認しながら進める業務と相性があります。
経営、営業、人事、経理、法務、ITなど、情報が複数のシステムに分かれている業務で活用できます。
| 部門 |
質問例 |
活用方法 |
| 経営 |
売上が落ちた原因は? |
売上・商品・営業データを確認 |
| 営業 |
この顧客への提案材料は? |
CRM・商談履歴・商品資料を検索 |
| 人事 |
候補者の経験を確認したい |
職歴や採用情報を整理 |
| 経理 |
支出が増えた理由は? |
会計データや請求情報を比較 |
| 法務 |
契約で確認すべき点は? |
契約書や社内規程を検索 |
| IT |
障害の原因候補は? |
ログや過去の障害情報を確認 |
経営分析での活用
たとえば「A商品の利益率が悪化した原因を調べて」という質問では、売上だけでなく、原価や過去の実績なども確認する必要があります。
Agentic RAGでは、必要なデータを順番に確認し、不足する情報があれば追加で調べる流れを作れます。
営業での活用
営業では、CRM、過去の商談履歴、商品資料などを横断して、顧客への提案に必要な情報を整理できます。
担当者が複数のシステムから情報を探す作業を減らし、提案準備を支援できます。
IT部門での活用
IT部門では、ログ、過去の障害履歴、マニュアルなどを確認し、障害の原因候補や確認項目を整理する用途が考えられます。
ただし、重要な判断までAIに任せる必要はありません。AIが情報収集や整理を支援し、最終確認は人が行う設計が重要です。
Agentic RAGは、人の判断を置き換えるのではなく、判断に必要な情報を集める作業を支援する仕組みとして活用できます。
Agentic RAGの基本アーキテクチャ
Agentic RAGは、生成AIだけで動く仕組みではありません。AIエージェントを中心に、検索システム、データベース、APIなどを組み合わせます。
基本的な流れは「質問 → 判断 → 情報取得 → 確認 → 回答」です。情報が足りなければ、追加検索を行います。
| 構成要素 |
主な役割 |
| LLM |
質問の理解や回答生成 |
| AIエージェント |
次に何をするか判断 |
| オーケストレーター |
複数の処理やツールを管理 |
| 検索システム |
関連する文書や情報を検索 |
| データベース |
業務データを取得 |
| API |
社内・外部システムと連携 |
| 権限管理 |
利用できる情報を制御 |
| ログ |
検索や処理の履歴を記録 |
AIエージェントが処理を判断する
中心となるのがAIエージェントです。質問を理解し、何を調べるか、どの情報源を使うかを判断します。
たとえば売上分析では、売上データを確認したあと、必要に応じて商品別データや営業情報を追加で調べます。
複数の情報源を使い分ける
売上はデータベース、顧客情報はCRM、社内ルールは文書検索というように、情報に合わせて利用するツールを変えます。
取得した情報が不足していれば追加検索し、十分であれば回答を生成します。
権限管理とログも重要
企業利用では、AIがアクセスできる情報を適切に制限する必要があります。
また、どの情報を検索し、どのツールを使ったのかを記録することで、回答の確認や問題発生時の調査がしやすくなります。
Agentic RAGでは、AIエージェントを中心に複数の情報源をつなぎ、質問に応じて必要な処理を選べる設計が重要です。
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Agentic RAG導入で重要になる5つの設計ポイント

Agentic RAGは、複数の情報源やツールを使える一方、設計が複雑になりやすい仕組みです。
企業で導入する場合は、特に次の5つを明確にすることが重要です。
| 設計ポイント |
確認すること |
| ① 情報源 |
どのデータを検索対象にするか |
| ② ツール |
どの条件で何を利用するか |
| ③ 停止条件 |
どこで検索や処理を終了するか |
| ④ 権限 |
誰がどの情報を利用できるか |
| ⑤ 根拠・ログ |
何を参照して回答したか確認できるか |
① 検索する情報源を決める
最初に、AIが利用できる情報源を明確にします。社内文書、CRM、データベースなど、業務に必要な範囲から選びます。
すべてのデータを最初から接続するのではなく、対象業務に必要な情報から始めることが重要です。
② ツールの役割を決める
文書検索、データベース、APIなど、それぞれのツールをどの場面で使うかを整理します。
役割を明確にすることで、AIが不要なツールを選ぶリスクを抑えやすくなります。
③ 検索の停止条件を設定する
Agentic RAGは、情報が不足すると追加検索を行います。そのため、検索回数や処理時間などの停止条件が必要です。
必要以上に検索を続けない仕組みにすることで、処理時間やコストを管理しやすくなります。
④ アクセス権限を管理する
AI経由で、本来閲覧できない情報へアクセスできる状態は避ける必要があります。
利用者の権限に応じて、AIが検索・取得できる情報を制御する設計が重要です。
⑤ 回答根拠とログを残す
企業利用では、回答だけでなく「何を根拠に回答したのか」を確認できることが重要です。
参照した情報、検索内容、利用したツールなどを記録すれば、回答の確認や問題発生時の原因調査に役立ちます。
Agentic RAGでは、高度な機能を増やすことよりも、情報源・ツール・停止条件・権限・ログを明確に設計することが企業利用の重要なポイントです。
Agentic RAGは万能ではない|導入前に知るべき課題
Agentic RAGは複数の情報を調べられる一方、従来RAGより仕組みが複雑になります。
導入前に、コストや処理時間、権限管理などの課題を確認することが重要です。
| 課題 |
確認すること |
| コスト |
検索やLLMの利用回数が多すぎないか |
| 処理時間 |
回答までに時間がかかりすぎていないか |
| ツール選択 |
適切な情報源を選べているか |
| 不要な検索 |
同じ情報を繰り返し調べていないか |
| 権限管理 |
閲覧できない情報へアクセスしていないか |
| 回答根拠 |
参照した情報を確認できるか |
コストと処理時間が増える
Agentic RAGでは、質問の分解や追加検索によって処理回数が増える場合があります。
必要以上に検索しないよう、検索回数や停止条件を設定することが重要です。
適切なツールを選ぶとは限らない
AIが目的に合わない情報源やツールを選ぶ可能性もあります。
どの場面でどのツールを使うか、事前にルールを整理しておく必要があります。
権限管理が重要になる
複数のシステムを接続する場合、利用者が閲覧できない情報をAI経由で取得できないようにします。
利用者ごとにアクセスできる情報を制御する設計が必要です。
回答の根拠を確認できるようにする
Agentic RAGでは、複数の情報を使って回答するため、どの情報を参照したのか分かりにくくなる場合があります。
参照した文書やデータ、利用したツールを記録し、回答の根拠を確認できる状態にすることが重要です。
単純なFAQや社内検索では、従来RAGの方が適している場合もあります。Agentic RAGは、複雑な調査や複数システムの横断が必要な業務で活用することが重要です。
従来RAGとAgentic RAG、どちらを選ぶべきか

Agentic RAGは高度な処理ができますが、すべての業務で必要になるわけではありません。
重要なのは、業務の複雑さに合わせて従来RAGとAgentic RAGを使い分けることです。
| 業務・条件 |
従来RAG |
Agentic RAG |
| FAQへの回答 |
向いている |
必要性は低い |
| 社内文書検索 |
向いている |
内容によって有効 |
| 単一の情報源 |
向いている |
必要性は低い |
| 複数システムの横断 |
やや不向き |
向いている |
| 複雑な調査 |
やや不向き |
向いている |
| 質問の分解 |
やや不向き |
向いている |
| 追加検索 |
設計が必要 |
向いている |
| シンプルな運用 |
向いている |
やや複雑 |
たとえば「出張費の申請ルールを教えて」という質問であれば、社内規程から情報を検索すれば回答できます。
このような用途では、従来RAGの方がシンプルに構築・運用できます。
一方、「今月の営業成績が落ちた原因を調べて」という質問では、売上、顧客、商談、営業活動など複数の情報を確認する必要があります。
このように、質問を分解し、複数の情報源を調べる業務ではAgentic RAGが向いています。
選ぶときの3つの判断基準
- 1回の検索で回答できるか
- 複数の情報源を確認する必要があるか
- 検索結果によって次の行動を変える必要があるか
1回の検索で十分なら従来RAG、複数の調査や判断が必要ならAgentic RAGが選択肢になります。
最初からすべてをAgentic RAGにする必要はありません。まず従来RAGで試し、解決できない部分だけAgentic化する方法もあります。
新しい技術だから選ぶのではなく、業務に必要な複雑さに合わせて選ぶことが重要です。
Agentic RAG導入は小さなPoCから始める
Agentic RAGを導入する場合は、最初から全社展開するのではなく、小さなPoCから始めることが重要です。
まず対象業務を1つに絞り、従来RAGでは解決しにくい部分を確認します。
| 手順 |
確認すること |
| STEP1 対象業務を決める |
どの業務を改善したいか |
| STEP2 情報源を整理する |
必要な文書やデータは何か |
| STEP3 従来RAGで試す |
通常の検索で回答できるか |
| STEP4 課題を確認する |
どの質問で追加調査が必要か |
| STEP5 Agentic化する |
必要な判断や追加検索を組み込む |
| STEP6 評価する |
精度・時間・コストなどを確認する |
| STEP7 対象を広げる |
効果を確認して適用範囲を拡大する |
対象業務を絞る
最初は、複数の情報を調べる必要がある業務を1つ選びます。
対象を絞ることで、必要なデータやツール、評価方法を整理しやすくなります。
従来RAGで解けない部分を確認する
最初からAgentic RAGありきで考える必要はありません。まず通常のRAGで対応できるか確認します。
追加検索や複数システムの確認が必要な部分だけAgentic化することで、仕組みを複雑にしすぎることを防げます。
PoCの結果を評価する
PoCでは、回答できたかだけでなく、検索の精度、処理時間、コスト、回答根拠なども確認します。
課題を確認しながら改善し、効果が確認できた業務から対象を広げていくことが重要です。
Agentic RAGの効果をどう評価するか
Agentic RAGは、回答の正確さだけでは十分に評価できません。
必要な情報を取得できたか、適切なツールを選べたか、無駄な検索がなかったかなど、処理全体を見ることが重要です。
| 評価項目 |
確認すること |
| 回答精度 |
正しい回答ができたか |
| 検索精度 |
必要な情報を取得できたか |
| ツール選択 |
適切なツールを選べたか |
| 検索回数 |
不要な検索がなかったか |
| 回答根拠 |
参照した情報を確認できるか |
| 処理時間 |
回答までの時間は適切か |
| コスト |
処理にかかる費用は適切か |
| タスク完了 |
目的の業務を完了できたか |
| 人の確認 |
どの程度の修正や確認が必要か |
回答だけでなく途中の処理も確認する
回答が正しくても、不要な検索を繰り返していれば、処理時間やコストが増えます。
検索、ツール選択、追加調査、回答生成を分けて確認することが重要です。
業務への効果も確認する
技術的な精度だけでなく、実際の業務で役立ったかも確認します。
情報収集の負担が減ったか、人による確認や修正がどの程度必要かなど、導入前後の作業を比較します。
Agentic RAGは、回答精度だけでなく、検索・ツール利用・時間・コスト・業務完了まで含めて評価することが重要です。
「AIを導入したい」「業務を変えたい」でも、何から始めるべきか分からない。
Start Challenge Consultingでは、AI・DX活用から業務改革、データ活用、システム導入まで、
企業ごとの課題に合わせて幅広く支援しています。
自社の課題に、どのような支援ができるのか確認してみませんか?
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Agentic RAGは企業システムを「検索」から「行動」へ変える

Agentic RAGの大きな変化は、企業システムを「検索する仕組み」から「目的に応じてAIが調査する仕組み」へ広げることです。
従来は、人がCRMや社内文書、データベースなどを開き、必要な情報を探していました。
Agentic RAGでは、人が目的を伝えると、AIが必要な情報源を選び、情報を集めて整理する流れを作れます。
| 段階 |
変化 |
| ① 質問 |
人がAIに目的を伝える |
| ② 判断 |
AIが必要な情報を判断する |
| ③ 調査 |
必要なシステムから情報を取得する |
| ④ 整理 |
集めた情報を比較・整理する |
| ⑤ 確認 |
人が結果を確認して判断する |
さらにAPIや業務ツールと連携すれば、情報を検索するだけでなく、決められた範囲で次の処理につなげることも可能です。
ただし、すべての判断や業務をAIに任せることが目的ではありません。
重要な意思決定では、AIが情報収集や整理を支援し、最終的な確認や判断を人が行う設計が重要です。
また、単純なFAQや社内検索では、従来RAGの方が適している場合もあります。
Agentic RAGは従来RAGをすべて置き換える技術ではありません。企業システムを「人が情報を探す仕組み」から「AIが必要な情報を集め、人の判断を支援する仕組み」へ広げる選択肢の一つです。
よくある質問
Q1. Agentic RAGとは何ですか?
Agentic RAGとは、従来のRAGにAIエージェントの考え方を組み合わせ、AIが必要な情報や検索方法を判断しながら調査・回答する仕組みです。
Q2. RAGとは何ですか?
RAGはRetrieval-Augmented Generationの略で、日本語では検索拡張生成と呼ばれます。社内文書やデータベースなどから関連情報を検索し、その内容をもとに生成AIが回答します。
Q3. 従来RAGとAgentic RAGの違いは何ですか?
従来RAGは基本的に質問、検索、回答という流れで処理します。Agentic RAGでは、質問の分解や情報源の選択、追加検索などをAIが判断しながら進めます。
Q4. Agentic RAGでは質問を分解できますか?
はい。複雑な質問を複数の調査項目に分け、それぞれに必要な情報を確認するように設計できます。
Q5. Agentic RAGは自動で追加検索できますか?
取得した情報が不足している場合、検索条件を変えたり、別の情報源を確認したりする追加検索を行うように設計できます。
Q6. Agentic RAGは複数の情報源を利用できますか?
はい。社内文書、CRM、データベース、基幹システムなど、複数の情報源を利用する仕組みを構築できます。
Q7. Agentic RAGはAPIと連携できますか?
はい。APIをツールとして利用する設計にすることで、社内・外部システムから必要な情報を取得する処理につなげられます。
Q8. Agentic RAGはデータベースを利用できますか?
はい。文書検索だけでなく、業務に必要なデータをデータベースから取得する仕組みを組み込むこともできます。
Q9. Agentic RAGは社内検索に使えますか?
利用できます。ただし、単純な社内文書検索だけであれば、従来RAGの方がシンプルで適している場合があります。
Q10. Agentic RAGはどのような業務に向いていますか?
複数の情報源を確認する調査や分析、複数システムを横断する業務などに向いています。
Q11. Agentic RAGは経営分析に活用できますか?
活用できます。売上や商品、営業など複数のデータを確認し、経営判断に必要な情報を整理する用途が考えられます。
Q12. Agentic RAGは営業業務に活用できますか?
CRM、商談履歴、商品資料などを横断し、顧客への提案に必要な情報を整理する用途が考えられます。
Q13. Agentic RAGは人事業務でも利用できますか?
利用できます。たとえば、職歴や採用情報などを確認し、候補者に関する情報を整理する用途が考えられます。
Q14. Agentic RAGは経理業務にも使えますか?
会計データや請求情報などを確認し、支出の変化や確認に必要な情報を整理する用途が考えられます。
Q15. Agentic RAGは法務業務に活用できますか?
契約書や社内規程などを横断して検索し、確認に必要な情報を整理する用途が考えられます。重要な判断は人が行うことが重要です。
Q16. Agentic RAGはIT部門でどのように活用できますか?
ログ、過去の障害履歴、マニュアルなどを確認し、障害の原因候補や確認項目を整理する用途が考えられます。
Q17. Agentic RAGの中心となる仕組みは何ですか?
AIエージェントが中心となり、質問を理解して、どの情報を調べるか、どのツールを利用するかを判断します。
Q18. オーケストレーターにはどのような役割がありますか?
検索やデータ取得など、複数の処理やツールを管理し、Agentic RAG全体の処理をつなぐ役割を持ちます。
Q19. Agentic RAGではアクセス権限の管理が必要ですか?
必要です。利用者が本来閲覧できない情報をAI経由で取得できないように、アクセスできる情報を制御する必要があります。
Q20. Agentic RAGではログを残す必要がありますか?
企業利用では重要です。参照した情報や利用したツールなどを記録することで、回答の確認や問題発生時の調査がしやすくなります。
Q21. Agentic RAGは従来RAGよりコストが増えることがありますか?
あります。質問の分解や追加検索によって、検索やLLMの利用回数が増える場合があるためです。
Q22. Agentic RAGでは回答までの時間が長くなることがありますか?
あります。複数の検索やツール利用を行う場合は処理が増えるため、検索回数や停止条件を適切に設計する必要があります。
Q23. Agentic RAGが間違ったツールを選ぶことはありますか?
可能性はあります。そのため、どの場面でどのツールを使うかを整理し、ツールの役割を明確にすることが重要です。
Q24. Agentic RAGでは検索の停止条件が必要ですか?
必要です。必要以上に追加検索を続けないように、検索回数や処理時間などの停止条件を設定することが重要です。
Q25. Agentic RAGはすべての企業システムに必要ですか?
必要ではありません。単純なFAQや社内文書検索であれば、従来RAGの方がシンプルで適している場合があります。
Q26. 従来RAGとAgentic RAGはどう使い分ければよいですか?
1回の検索で回答できる業務は従来RAG、複数の情報源や追加調査が必要な業務はAgentic RAGを検討すると分かりやすくなります。
Q27. Agentic RAGは最初から全社導入すべきですか?
最初から全社展開するのではなく、対象業務を絞った小さなPoCから始め、効果や課題を確認する方法が適しています。
Q28. Agentic RAGのPoCでは何を確認すべきですか?
対象業務、必要な情報源、従来RAGでは解決できない部分、追加検索の必要性、回答精度、処理時間、コストなどを確認します。
Q29. Agentic RAGの効果はどのように評価しますか?
回答精度だけでなく、検索精度、ツール選択、検索回数、回答根拠、処理時間、コスト、タスク完了、人による確認の必要性などを確認します。
Q30. Agentic RAGは企業システムをどのように変える可能性がありますか?
人が複数のシステムから情報を探す形から、AIが目的に応じて必要な情報を集め、整理し、人の判断を支援する形へ変える可能性があります。
まとめ|Agentic RAGは目的に合わせた導入が重要

Agentic RAGは、従来RAGにAIエージェントの考え方を組み合わせ、必要な情報や検索方法をAIが判断しながら調査する仕組みです。
従来RAGが「検索して回答する」ことを得意とするのに対し、Agentic RAGでは質問の分解、情報源の選択、追加検索、ツール利用などを組み合わせられます。
主なポイントは次のとおりです。
- 複雑な質問を複数のタスクに分けられる
- 複数の情報源を横断して調査できる
- 情報が不足していれば追加検索できる
- データベースやAPIなどと連携できる
- 複数ステップの調査や分析に向いている
- 権限管理や回答根拠の確認が重要になる
- すべての業務をAgentic RAGにする必要はない
企業では、情報が社内文書、CRM、基幹システム、データベースなどに分散しています。
Agentic RAGを活用すれば、人が複数のシステムから情報を探すのではなく、AIが必要な情報を集めて整理する仕組みを作れる可能性があります。
一方、仕組みが複雑になるほど、コスト、処理時間、アクセス権限、ログ管理などの課題も増えます。
そのため、まずは対象業務を絞ってPoCを行い、従来RAGでは解決しにくい部分を確認することが重要です。
単純なFAQや社内文書検索なら従来RAG、複数の情報を調べながら進める業務ならAgentic RAGというように、目的に合わせて使い分ける必要があります。
Agentic RAGの価値は、AIにすべての判断を任せることではありません。情報収集や整理をAIが支援し、人が重要な確認や意思決定に集中できる仕組みを作ることが重要です。
SUPERVISED BY
平出 大輔
株式会社Start Challenge Consulting
代表取締役CEO/AI・DXコンサルタント
約10年間、外資系コンサルティングファームにて企業のDX推進・業務改革・AI活用支援など数多くのプロジェクトを担当。これまで培った知見をもとに株式会社Start Challenge Consultingを創業し、生成AI、データ活用、DX推進を軸とした経営・業務改革支援を行っています。
「仕事=生きがい・楽しさ」という価値観を大切にし、クライアントと同じ目線で未来を創る真のパートナーとして、日本を代表するコンサルティングファームを目指しています。