RAG・LLM

OpenAIはRAGを捨てるのか──最新発表から読み解くAI戦略

2026年08月04日 | 読了 5分 | SCC編集部
OpenAIはRAGを捨てるのか、最新発表から読み解くAI戦略
生成AIの進化とともに、OpenAIはResponses APIやFile Search、Web Search、Agents SDKなど、新しい機能を次々と発表しています。これらの登場によって、AIは単に文章を生成するだけでなく、必要な情報を検索し、複数のツールを使い分けながら回答を作成する「AIエージェント」へと進化しつつあります。
その一方で、「OpenAIはRAGを捨てた」「RAGはもう不要になる」という意見を目にする機会も増えました。しかし、企業では現在も社内FAQや契約書検索、技術文書検索などでRAGが活用されており、導入が止まっているわけではありません。
では、本当にRAGは終わるのでしょうか。
結論から言えば、なくなるのはRAGではなく、従来の使い方です。OpenAIが目指しているのは、AI自身が必要に応じて検索やツール利用を判断する仕組みであり、RAGはその中核技術の一つとして位置付けられています。
本記事では、以下の内容を分かりやすく解説します。
  • OpenAIは本当にRAGを捨てたのか
  • RAGの仕組みと企業で利用され続けている理由
  • Responses API・File Search・Web Search・Agents SDKの役割
  • RAGとAIエージェントの違い
  • 実際に比較・検証して分かったそれぞれの強みと弱み
  • 今後の「Agentic RAG」とOpenAIのAI戦略
「RAGはもう不要なのか」「これから企業はどのように生成AIを導入すべきなのか」と疑問を持つ方に向けて、OpenAIの最新発表と企業での実際の活用状況を整理しながら、今後のAI戦略を分かりやすく解説します。

OpenAIは本当にRAGを捨てたのか【結論】

結論:RAGはなくならない

結論から言えば、OpenAIはRAGを捨てたわけではありません。
Responses APIやFile Searchの登場によって、「RAGは不要になった」という声もあります。しかし、実際にはRAGの考え方は現在も活用されています。変わったのは、検索処理を人が細かく設計するのではなく、AIが必要に応じて検索を実行する仕組みへ進化したことです。
企業では、社内文書や契約書、技術資料などを生成AIで活用するために、現在もRAGが利用されています。そのため、「RAGがなくなる」のではなく、「RAGの役割や使い方が変わる」と考える方が適切です。
従来と現在の違いを整理すると、以下のようになります。
従来 現在
RAGを個別に構築する AIが検索を実行する
検索フローを人が設計する AIが検索の必要性を判断する
検索から回答までを固定する 検索・推論・ツール利用を組み合わせる

変わったのは「RAGの使い方」

従来のRAGでは、開発者が検索対象や検索条件、検索回数、回答生成までの流れを設計する必要がありました。
一方、現在のOpenAIは、AI自身が質問内容を理解し、必要に応じて社内文書やWeb、APIなどを選択する仕組みを目指しています。
検索は独立した仕組みではなく、AIがタスクを完了するために利用するツールの一つになりつつあります。人の役割も、検索処理を細かく設定することから、AIが利用できるデータやツールを整備することへ変化しています。
従来 現在
人が検索条件を決める AIが検索方法を判断する
一度だけ検索する 必要に応じて複数回検索する
社内文書の検索が中心 社内文書・Web・APIなどを組み合わせる

OpenAIが目指しているもの

OpenAIは本当にRAGを捨てたのか【結論】

OpenAIの最新AI戦略から、RAGの位置づけがどのように変化しているのかを整理します。

OpenAIが目指しているのは、RAGをなくすことではなく、AIエージェントが検索を自然に利用できる仕組みです。
質問によっては社内文書の検索が適している場合もあれば、最新情報を確認するためにWeb検索が必要な場合もあります。さらに、外部APIの利用やパソコン操作が必要になるケースもあります。
このような処理を固定された流れで実行するのではなく、AI自身が必要なツールを判断して使い分けることが、エージェント型AIの特徴です。
従来 今後
RAGを作る AIが検索する
検索してから回答する AIが判断して検索する
人が処理を設計する AIエージェントが実行する
OpenAIはRAGを捨てたのではなく、AIエージェントの中へ組み込み、必要なときに自動で利用できる仕組みへ進化させようとしています。今後は「RAGを作る」ことよりも、「AIが適切に検索できる環境を整える」ことが重要になるでしょう。

そもそもRAGとは何か

RAGの仕組み

RAGは、生成AIが回答を作成する前に、関連する情報を検索してから回答する仕組みです。
従来のLLMは学習済みデータをもとに回答するため、最新情報や社内文書の内容には対応できませんでした。また、事実と異なる内容を回答するハルシネーションも課題でした。
RAGでは、まず社内文書やデータベースから関連情報を検索し、その情報をLLMへ渡して回答を生成します。そのため、最新情報や企業独自のデータを活用した回答が可能になります。
ステップ 内容
質問 ユーザーが質問する
検索 関連する情報を検索する
関連文書取得 必要な文書を取得する
回答生成 取得した文書をもとに回答を作る
回答 ユーザーへ回答を返す

なぜ企業で普及したのか

RAGが企業で普及した理由は、社内データを生成AIで活用できるようになったためです。
社内マニュアルや契約書、技術資料などを検索し、その内容をもとに回答できるため、業務で利用しやすくなりました。
活用目的 内容
ハルシネーション対策 検索結果を根拠に回答できる
社内文書の活用 マニュアルや契約書を利用できる
最新情報への対応 更新された文書を検索できる

RAGの課題

RAGの課題である検索精度・文書分割・ベクトル化・更新・運用コストを解説した図解

RAGでは、検索精度や文書の分割方法、ベクトル化、情報更新、運用コストなどが回答品質に影響します。

一方で、RAGには検索品質によって回答精度が左右されるという課題があります。
また、検索対象となる文書の管理や更新、検索基盤の運用など、継続的なメンテナンスも必要です。
課題 内容
検索精度 必要な文書を取得できない場合がある
文書の分割設計 文書の分け方が回答品質に影響する
情報のベクトル化 変換方法の品質が検索精度を左右する
更新 文書を継続的に管理する必要がある
運用コスト データ管理や検索基盤の運用が必要になる
これらの課題を改善するため、OpenAIはAI自身が検索の必要性を判断するエージェント型の仕組みへ移行を進めています。

OpenAIが発表した最新AI戦略とは

Responses API

OpenAIは、AIエージェントを構築する中心的な仕組みとしてResponses APIを提供しています。
Responses APIでは、文章生成だけでなく、検索や推論、外部ツールの利用などを一つの流れで実行できます。従来のように複数の処理を個別に組み合わせる必要が減り、AIエージェントを構築しやすくなりました。

File Search

File Searchは、アップロードした文書をAIが検索し、その内容をもとに回答を生成する機能です。
社内マニュアルや契約書、技術資料などを検索対象にできるため、独自に複雑なRAGを構築しなくても、社内ナレッジを活用しやすくなります。

Web Search

Web Searchは、インターネット上の情報を検索し、その結果をもとに回答を生成する機能です。
通常のLLMだけでは対応しにくい最新情報や公開情報を取得できるため、ニュースや市場動向、制度変更などを確認する場面で活用できます。

Computer Use

Computer Useは、AIが画面を認識し、パソコン上の操作を実行するための機能です。
Webサイトの操作やフォーム入力、ボタンの選択などを行えるため、生成AIは回答を作るだけでなく、実際の業務を進める存在へ変化しつつあります。

Agents SDK

Agents SDKは、複数のツールや処理を組み合わせたAIエージェントを開発するための仕組みです。
File SearchやWeb Searchなどを組み合わせながら、目的に応じて処理を切り替えるAIを構築できます。
機能 主な役割
Responses API 検索・推論・ツール利用を統合する
File Search 社内文書やアップロード資料を検索する
Web Search インターネット上の情報を取得する
Computer Use 画面上の操作を実行する
Agents SDK 複数のツールを使うAIエージェントを構築する
OpenAIは、Assistants APIからResponses APIへの移行を進め、ツールを統合したエージェント型の仕組みへ軸足を移しています。
これまでのように検索機能を単独で使うのではなく、AIが必要に応じて社内文書、Web、外部ツール、パソコン操作を選択する設計が中心になりつつあります。
AI
必要な処理を判断
検索・社内文書・Web・パソコン操作
回答またはタスク実行
この変化は、従来の「検索して回答するRAG」から、「AIが必要な検索や操作を判断するエージェント型AI」への転換を示しています。
AIを導入したいものの、「何から始めるべきか」「どの業務に活用すべきか」が明確になっていませんか?
AI導入で成果を出すためには、ツール選びよりも先に、
自社の経営課題や業務課題を整理し、AI活用の優先順位を決めることが重要です。
当社では、AI戦略の策定からロードマップ作成、導入計画、PoC、運用・定着まで一貫してご支援します。
「AIをどのように経営へ活かせるか相談したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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なぜOpenAIはRAG中心の考え方を変えたのか

OpenAIがRAG中心からAIエージェントへ戦略を変化させた背景を解説するイメージ

AIの役割は情報を検索して回答するだけでなく、複数のツールを使ってタスクを遂行する方向へ広がっています。

検索だけでは限界がある

従来のRAGは、検索した文書をLLMへ渡して回答する仕組みでした。しかし、実際の業務では一度の検索だけで解決できる質問ばかりではありません。
例えば、契約内容を確認しながら最新の制度変更も調べる場合は、社内文書だけでなくWeb検索も必要です。外部APIから情報を取得したり、複数の資料を比較したりする場面もあります。
このような複雑なタスクでは、検索だけを前提とした固定的なRAGでは対応しにくくなります。

AIが判断して検索する方が自然

OpenAIは、人が検索の流れを細かく設計するよりも、AI自身が必要な情報源を判断する仕組みへ軸足を移しています。
社内情報が必要な場合はFile Search、最新情報が必要な場合はWeb Searchというように、質問内容に応じてAIが適切な手段を選択します。
これにより、開発者がすべての検索条件や処理順序を固定する必要が減り、質問に応じた柔軟な対応が可能になります。

エージェント時代へ移行した

OpenAIが目指しているのは、質問に回答するだけのAIではなく、目的を達成するために必要な行動を選べるAIです。
検索はそのための手段の一つとなり、AIは必要に応じて複数回検索したり、外部ツールを利用したりしながらタスクを進めます。
この考え方が、現在のエージェント型AIの基本です。
従来RAG エージェント型AI
一回検索 必要に応じて複数回検索
固定フロー AIが状況を判断する
検索中心 タスク全体を実行する
このように、OpenAIはRAGを否定したのではなく、AIエージェントの一機能として発展させる方向へ進んでいます。今後は、RAGを個別に作ることよりも、AIが最適な検索やツールを利用できる環境を整えることが重要になります。

RAGとAIエージェントは何が違うのか

RAGとAIエージェントの仕組みや役割の違いを比較するイメージ

RAGが情報検索と回答生成を中心とするのに対し、AIエージェントは判断やツール利用、タスク実行まで担います。

RAGとAIエージェントは混同されることがありますが、役割は大きく異なります。
RAGは必要な情報を検索して回答する仕組みであり、AIエージェントは目的を達成するために必要な行動を判断し、実行する仕組みです。
つまり、RAGはAIエージェントと競合する技術ではなく、AIエージェントが利用する機能の一つと考えると分かりやすいでしょう。
項目 RAG AIエージェント
目的 関連情報を検索して回答する 目的達成に必要な処理を実行する
検索 基本的に検索を前提とする 必要な場合に検索を選択する
思考 取得した情報をもとに回答を作る 状況を判断して次の行動を決める
外部ツール 検索基盤の利用が中心 Web、API、パソコン操作などを利用する
タスク 回答生成が中心 複数の処理を組み合わせて実行する
意思決定 人が処理の流れを設計する AIが次の行動を判断する

RAGが得意な業務

RAGは、社内文書やマニュアルなど、決められた情報の中から必要な内容を正確に探す業務に適しています。
例えば、社内規程の確認、契約条項の検索、製品仕様書の参照など、回答の根拠となる文書が明確な業務では高い効果を発揮します。
業務 活用内容
社内FAQ 社内ルールや手続きの検索
契約書検索 契約条項や注意点の確認
技術文書検索 仕様書や手順書の検索
ナレッジ検索 社内資料を横断して必要な情報を探す

Agentが得意な業務

AIエージェントは、検索だけでなく、複数の処理を組み合わせる必要がある業務に向いています。
例えば、Web検索で情報を集め、その内容を要約し、メールやレポートを作成するといった一連の作業を進めることができます。
業務 活用内容
情報収集 複数の情報源を調査して整理する
レポート作成 データ取得から要約まで実行する
営業支援 顧客情報を確認して提案内容を作る
業務自動化 APIやパソコン操作を組み合わせる

両者を組み合わせる時代

今後は、RAGかAIエージェントのどちらかを選ぶのではなく、両者を組み合わせる設計が重要になります。
AIエージェントが必要に応じてRAGを利用し、社内文書を検索した後に、Web検索や外部ツールも組み合わせてタスクを進める形です。
RAGは正確な情報取得を支え、AIエージェントはその情報を使って次の行動を決めます。両者を組み合わせることで、検索精度と業務の柔軟性を両立できます。
そのため、企業の生成AI活用では、RAGを単独で導入するのではなく、将来的にAIエージェントから利用できる検索基盤として設計することが重要になるでしょう。

実際に企業ではRAGはどう使われているのか

社内FAQ

企業で代表的な活用例の一つが、社内FAQです。
就業規則や経費精算、各種申請手順などを検索対象にし、社員からの質問に回答します。社内ルールを更新すれば回答にも反映できるため、問い合わせ対応を効率化しやすくなります。

契約書検索

法務部門では、契約書の検索にもRAGが活用されています。
契約条項や更新条件、秘密保持に関する記載などを検索し、確認したい箇所を探しやすくします。ただし、最終的な法的判断は担当者が行う必要があります。

営業支援

営業部門では、過去の提案書や製品資料、事例資料などを検索する用途で利用されています。
顧客や案件に関連する情報を探しやすくなるため、提案準備や商談前の情報整理を支援できます。

技術文書検索

製造業やIT企業では、設計書や仕様書、運用マニュアルなどの検索にRAGが活用されています。
複数の文書を横断して必要な情報を確認できるため、技術者の調査やトラブル対応を支援しやすくなります。

コールセンター

コールセンターでは、オペレーター向けの回答支援として利用されています。
問い合わせ内容に応じてFAQや対応マニュアルを検索し、回答候補や確認すべき情報を表示します。これにより、担当者ごとの対応差を抑えやすくなります。
活用シーン 検索対象 主な目的
社内FAQ 就業規則・社内ルール 社員からの問い合わせ対応
契約書検索 契約書・社内規程 契約内容の確認
営業支援 提案書・製品資料・事例資料 提案準備と情報整理
技術文書検索 設計書・仕様書・手順書 技術情報の確認
コールセンター FAQ・対応マニュアル オペレーターの回答支援
このように、企業で利用されているRAGの多くは、社内に蓄積された情報を検索し、業務に必要な回答や確認材料を提供する目的で導入されています。
AIエージェントが注目されている現在でも、社内情報を正確に取得する検索基盤として、RAGは重要な役割を担っています。

【独自検証】実際にRAGとAIエージェントを比較して分かったこと

ここでは、独自RAG、ChatGPT、File Search、Web Searchを利用し、それぞれの特徴を比較しました。
結論から言えば、どちらか一方が常に優れているのではなく、利用する情報や業務内容によって最適な仕組みが異なります。

比較した内容

今回の検証では、同じ質問を複数の環境で実行し、回答速度、精度、引用、最新情報への対応、社内文書の検索、柔軟性を比較しました。
  • ChatGPT
  • File Search
  • Web Search
  • 独自RAG
項目 RAG AIエージェント
回答速度 検索範囲が限定されていれば回答しやすい 検索回数や処理内容によって変わる
精度 社内文書など対象が明確な場合に強い 利用する情報源やツールに左右される
引用 参照した文書を示しやすい 利用する検索機能によって異なる
最新情報 登録済み文書の更新が必要 Web検索を使うことで対応しやすい
社内文書 検索対象を限定して活用しやすい File Searchなどを通じて利用できる
柔軟性 あらかじめ設計した検索処理が中心 状況に応じて検索や処理を変更できる

検証から分かったこと

検証を通じて、RAGとAIエージェントは競合する仕組みではなく、それぞれ異なる強みを持っていることが分かりました。

社内文書だけならRAGは非常に強い

社内マニュアルや契約書など、検索対象が明確な場合はRAGが適しています。検索範囲を限定できるため、必要な情報を効率よく取得しやすくなります。

Web検索はAgentが有利

最新ニュースや公開情報を含む質問では、Web Searchを利用できるAIエージェントが有利です。必要に応じてインターネットを検索し、最新情報を回答へ反映できます。

複数ステップ処理ではAgentが圧倒的

複数の資料を比較する、検索結果を要約する、外部ツールを使うといった処理では、AIエージェントの柔軟性が強みになります。
検索だけで終わらず、取得した情報を使って次の処理へ進めるため、複雑な業務に対応しやすくなります。

正確性は検索品質に依存

RAGとAIエージェントのどちらを利用する場合でも、回答の正確性は検索対象となる情報の品質に左右されます。
文書が古い、内容が重複している、必要な情報が登録されていないといった状態では、AIの性能が高くても適切な回答を生成できません。

RAGは消えない

今回の比較から分かったのは、RAGはAIエージェントに置き換えられる技術ではないということです。
AIエージェントが社内文書を利用する場合も、その裏側では関連情報を検索して回答へ渡すRAGの考え方が活用されます。
今後はRAGかAIエージェントかを選ぶのではなく、AIエージェントが必要に応じてRAGを利用する構成が重要になるでしょう。
AIを導入したいものの、「何から始めるべきか」「どの業務に活用すべきか」が明確になっていませんか?
AI導入で成果を出すためには、自社の経営課題や業務課題を整理し、AI活用の優先順位を決めることが重要です。
当社では、AI戦略の策定からロードマップ作成、導入計画、PoC、運用・定着まで一貫してご支援します。
「AIをどのように経営へ活かせるか相談したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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OpenAIが考える「Agentic RAG」の時代

AIが検索を判断する

従来のRAGでは、人が検索対象や検索のタイミングをあらかじめ設計していました。
一方、Agentic RAGでは、AI自身が検索の必要性を判断します。質問内容に応じて社内文書を検索したり、Web検索を実行したりしながら、必要な情報源を選択します。
そのため、開発者には検索処理を細かく固定することよりも、AIが利用できるデータやツールを整備することが求められます。

複数の情報源を使う

Agentic RAGは、一つの情報源だけに依存せず、複数の情報を組み合わせて回答を生成します。
例えば、社内文書で製品仕様を確認し、Web検索で最新情報を調べ、必要に応じてAPIやデータベースから情報を取得するといった処理が可能です。
情報源 主な用途
社内文書 マニュアル・契約書・社内規程の確認
Web 最新ニュース・公開情報の取得
API 外部システムや業務データの取得
データベース 社内データや顧客情報の検索

検索も推論もAIが担当

Agentic RAGでは、検索だけでなく、取得した情報を比較し、どの情報を回答に使うかまでAIが判断します。
必要な情報が不足している場合は追加検索を行い、複数の検索結果やツールの出力を整理して回答を作成します。
検索を一度実行して終わるのではなく、目的に応じて検索と推論を繰り返せることが、従来型RAGとの大きな違いです。
質問
AIが必要な情報と行動を判断
社内文書・Web・API・データベースを利用
取得した情報を統合・推論
回答
近年は、検索を一回実行して回答する従来型RAGだけでなく、AIが必要に応じて複数回の検索やツール利用を行うAgentic RAGの考え方が広がっています。
今後はRAGを単独で構築するのではなく、AIエージェントが必要に応じて検索基盤を利用する設計が、企業の生成AI活用で重要になるでしょう。

企業は今後RAGをどう導入すべきか

企業が今後RAGやAIエージェントを導入する方法を解説するイメージ

企業はRAG単体だけでなく、AIエージェントや検索機能との組み合わせを前提に導入を検討することが重要です。

企業・業種 おすすめの導入方法
中小企業 File Searchなどを活用し、小規模な文書検索から始める
大企業 社内データとAIエージェントを連携し、部門横断で活用する
製造業 技術文書や仕様書、マニュアル検索を中心に導入する
金融業 契約書や社内規程など、機密性の高い文書を安全に検索する
医療 ガイドラインや院内マニュアルを検索基盤として活用する

今後はAgentを前提に設計する

今後の企業では、RAGを単独で導入するのではなく、AIエージェントから利用できる検索基盤として設計することが重要です。
AIが必要に応じて社内文書、Web、APIなどを使い分ける仕組みが広がっているため、将来的な機能追加や他システムとの連携も考慮する必要があります。
最初は社内FAQやマニュアル検索など、対象を限定して導入し、検索精度や運用方法を確認しながら活用範囲を広げる進め方が現実的です。

検索品質が重要になる

AIの性能が向上しても、検索対象となる情報の品質が低ければ、適切な回答は得られません。
必要な文書を正しく取得できるように、文書の分割方法や検索対象の範囲、更新方法を設計することが重要です。
どのAIを使うかだけでなく、AIが検索する情報をどのように管理するかが、RAG導入の成否を左右します。

データ整備が最優先

RAGやAIエージェントを導入する前に、社内データを整理する必要があります。
古いマニュアルや重複した資料、内容が異なる複数の文書が残っていると、AIはどの情報を優先すべきか判断しにくくなります。
整備項目 確認内容
文書の更新 古い情報や廃止されたルールを削除する
重複の整理 同じ内容の資料を統合する
権限管理 利用者ごとに閲覧できる情報を設定する
更新担当者 文書を管理する部門や担当者を決める
今後のRAG導入では、RAGかAIエージェントかを選ぶのではなく、AIエージェントが正確な情報を取得できる環境を整えることが重要です。
検索基盤と社内データを整備し、小さな業務から検証を重ねることが、企業の生成AI活用を安定して進めるための基本となります。
AIを導入したいものの、「何から始めるべきか」「どの業務に活用すべきか」が明確になっていませんか?
AI導入で成果を出すためには、自社の経営課題や業務課題を整理し、AI活用の優先順位を決めることが重要です。
当社では、AI戦略の策定からロードマップ作成、導入計画、PoC、運用・定着まで一貫してご支援します。
「AIをどのように経営へ活かせるか相談したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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よくある質問

Q1. RAGとは何ですか?

RAGは、生成AIが回答を作る前に、社内文書やデータベースなどから関連情報を検索し、その内容をもとに回答を生成する仕組みです。

Q2. OpenAIはRAGを捨てたのですか?

OpenAIがRAGそのものを捨てたわけではありません。RAGを単独で構築する考え方から、AIエージェントが必要に応じて検索を利用する考え方へ移行しています。

Q3. なぜ「RAGは不要になる」と言われているのですか?

File SearchやWeb Searchなど、検索機能を組み込んだサービスが登場し、企業がRAGを一から構築しなくても情報検索を利用しやすくなったためです。

Q4. 今後RAGはなくなりますか?

RAGはなくなるのではなく、AIエージェントの中で利用される仕組みへ変化すると考えられます。利用者から見えにくい技術になる可能性はありますが、検索の役割は残ります。

Q5. RAGはどのような流れで回答を作るのですか?

ユーザーの質問を受け取り、関連文書を検索し、取得した情報をLLMへ渡した後、その内容をもとに回答を生成します。

Q6. RAGはなぜ企業で普及したのですか?

社内マニュアルや契約書、技術資料など、通常の生成AIが持っていない企業独自の情報を回答に活用できるためです。

Q7. RAGはハルシネーション対策になりますか?

検索した文書を根拠に回答できるため、学習済み知識だけで回答する場合よりも、事実と異なる回答を抑えやすくなります。ただし、検索結果が不適切な場合は正確な回答にならないこともあります。

Q8. RAGは最新情報にも対応できますか?

検索対象の文書を最新状態へ更新すれば対応できます。ただし、古い資料が残っている場合は、古い情報をもとに回答する可能性があります。

Q9. RAGの検索精度が低いとどうなりますか?

質問に関係のない文書を取得したり、必要な情報を見つけられなかったりするため、回答の精度も低下します。

Q10. Chunk設計とは何ですか?

検索対象となる文書を、AIが扱いやすい単位に分割する設計です。分割する範囲が適切でないと、前後の文脈が失われたり、必要な情報を検索しにくくなったりします。

Q11. Embeddingとは何ですか?

文章の意味や特徴を数値として表現する仕組みです。RAGでは、質問と文書の意味的な近さを比較し、関連性の高い情報を検索するために利用されます。

Q12. RAGにはどのような運用負担がありますか?

文書の追加や更新、重複資料の整理、権限管理、検索精度の確認などを継続的に行う必要があります。

Q13. Responses APIとは何ですか?

文章生成だけでなく、検索や推論、外部ツールの利用などを一つの流れで実行するための仕組みです。AIエージェントを構築する中心的な役割を持ちます。

Q14. File Searchとは何ですか?

アップロードした文書をAIが検索し、その内容をもとに回答する機能です。社内マニュアルや契約書、技術資料などの活用に向いています。

Q15. Web Searchとは何ですか?

インターネット上の公開情報を検索し、その結果をもとに回答を生成する機能です。最新ニュースや市場動向などを確認する場面で活用できます。

Q16. Computer Useとは何ですか?

AIが画面を認識し、Webサイトの操作やフォーム入力、ボタンの選択などを行うための機能です。

Q17. Agents SDKとは何ですか?

検索機能や外部ツールなどを組み合わせ、目的に応じて処理を実行するAIエージェントを開発するための仕組みです。

Q18. RAGとAIエージェントの違いは何ですか?

RAGは関連情報を検索して回答する仕組みです。一方、AIエージェントは目的を達成するために、検索や外部ツールなどを選びながら複数の処理を実行します。

Q19. RAGが得意な業務は何ですか?

社内FAQ、契約書検索、技術文書検索など、検索対象となる文書が明確で、根拠を確認しながら回答する業務に向いています。

Q20. AIエージェントが得意な業務は何ですか?

情報収集、資料の比較、レポート作成、外部システムとの連携など、複数の処理やツール利用が必要な業務に向いています。

Q21. RAGとAIエージェントはどちらを選ぶべきですか?

どちらか一方を選ぶのではなく、AIエージェントが必要に応じてRAGを利用する設計が有効です。業務内容と利用する情報源に合わせて組み合わせる必要があります。

Q22. 企業ではRAGをどのように活用していますか?

社内FAQ、契約書検索、営業資料の検索、技術文書の確認、コールセンターの回答支援などに活用されています。

Q23. RAGは契約書検索にも使えますか?

契約条項や更新条件などを探す用途で活用できます。ただし、検索結果をそのまま法的判断として利用せず、最終確認は担当者が行う必要があります。

Q24. RAGは営業支援にどのように使えますか?

過去の提案書や製品資料、事例資料を検索し、商談前の情報整理や提案内容の作成を支援できます。

Q25. Agentic RAGとは何ですか?

AIが検索の必要性を判断し、社内文書やWeb、API、データベースなどを使い分けながら回答やタスクを進める考え方です。

Q26. Agentic RAGと従来型RAGの違いは何ですか?

従来型RAGは決められた流れで検索を行います。Agentic RAGは、AIが状況を判断し、必要に応じて複数回検索したり、異なる情報源を利用したりします。

Q27. 独自RAGとFile Searchはどう使い分ければよいですか?

小規模な文書検索から始める場合はFile Searchを利用しやすく、検索方法やデータ管理を細かく設計したい場合は独自RAGが候補になります。

Q28. RAG導入前に何を準備すべきですか?

検索対象となる文書を整理し、古い資料や重複資料を見直す必要があります。あわせて、更新担当者や閲覧権限も決めておくことが重要です。

Q29. 中小企業はどのようにRAG導入を始めればよいですか?

社内FAQやマニュアル検索など、対象業務と文書を限定して始める方法が現実的です。検索精度や運用方法を確認した後に、対象範囲を広げていきます。

Q30. 今後企業に求められるRAG戦略は何ですか?

RAGを単独の検索機能として導入するのではなく、AIエージェントから利用できる検索基盤として設計することが重要です。そのためには、検索品質と社内データの整備を優先する必要があります。

まとめ

OpenAIはRAGを捨てたわけではありません。Responses APIやFile Search、Web Search、Agents SDKなどの登場によって、RAGの役割や使い方が変わり始めています。
これまでのRAGは、人が検索対象や処理の流れを設計し、取得した文書をLLMへ渡して回答を生成する仕組みが中心でした。一方、現在はAI自身が検索の必要性を判断し、社内文書やWeb、APIなどを使い分けるエージェント型の仕組みへ移行しています。
File SearchやWeb Searchも、RAGを不要にする機能ではありません。必要な情報を検索し、その内容を回答へ反映するという点では、RAGの考え方をより利用しやすく、高度にした仕組みといえます。
企業では、社内FAQ、契約書検索、営業支援、技術文書検索、コールセンターなどで、現在もRAGが重要な役割を担っています。特に社内文書のように、検索対象が明確な業務では、RAGの強みは今後も残ります。
一方、最新情報の取得や複数の資料の比較、外部ツールとの連携など、複数の処理が必要な業務ではAIエージェントが適しています。今後は、RAGかAIエージェントかを選ぶのではなく、AIエージェントが必要に応じてRAGを利用する構成が重要になります。
現在 今後
RAGを作る AIが必要に応じて検索する
検索設定を人が行う AIが検索方法を判断する
プロンプト中心 AIエージェント中心
単体のLLMを利用する 複数の情報源やツールを統合する
今後の企業に求められるのは、RAGを導入すること自体ではなく、AIが正確な情報を検索できる環境を整えることです。そのためには、社内文書の整理、情報の更新、重複データの削除、権限管理など、検索基盤となるデータ整備が欠かせません。
RAGは消えるのではなく、AIエージェントの中に組み込まれ、利用者から見えにくい技術になっていくと考えられます。企業はRAGとAIエージェントを対立するものとして捉えず、両者を組み合わせた設計を検討することが重要です。
SUPERVISED BY
平出 大輔
株式会社Start Challenge Consulting
代表取締役CEO/AI・DXコンサルタント
約10年間、外資系コンサルティングファームにて企業のDX推進・業務改革・AI活用支援など数多くのプロジェクトを担当。これまで培った知見をもとに株式会社Start Challenge Consultingを創業し、生成AI、データ活用、DX推進を軸とした経営・業務改革支援を行っています。
「仕事=生きがい・楽しさ」という価値観を大切にし、クライアントと同じ目線で未来を創る真のパートナーとして、日本を代表するコンサルティングファームを目指しています。

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